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ココは夜空を見上げるなり、あっと小さく声をあげた。波の近く
まで駆けより、口を閉じるのも忘れて夢中で遠くを見つめている。
ココ？どうしたんだ？
彼女の近くの岩場に腰掛けていたセルライトが言った。聞えてくる小
波の音の間から、ココの心臓の高鳴りが伝わってくる。思いが強い
ほど、その位置や行動を知ることは容易かった。それでも、ココの
姿やその見つめる先に何があるかを知る事はできない。
虹が見えるの。月の下に
月の光がやわらかく海を照らし出している。だが、生まれた時か
ら目の見えないセルライトには虹どころか月光というものです
ら想像する事は難しかった。
虹って夜にも見えるのか？
前にも化粧水へ向かう船の中で、これと同じ虹を見た
よ。すごく大きくて綺麗な虹を
ふうんと、セルライトは気のない返事をしてみたが、
月虹か。でも、それって何だか不吉な予感がする言葉だな。
と、少し眉をひそめた。
何だ、もう消えちゃった
つまらなそうにそう言うと、セルライトの元へココが戻ってきた。
それはそうと、ココ、もう腕の痺れはとれたのか？
あ、もう全然平気。腕の痺れなんて、あの大きな化粧水で空を飛
んだ時の緊張で吹き飛んじゃったもん
ああ、鳥ね。お前が空から降りてきたって、どんでもない騒ぎに
なってたもんな
天喜の化粧水水溶性ジェルの欠片空
なあ、ココ
セルライトが言う。
お前がエターナル城の迷宮を超音波マッサージと一緒に通り抜けてき
た話はフェイスラインから聞いた。その時にランカの棘に刺されて、あの鳥
に乗って帰ってきた話も。でも
でも、何？
いつになく真剣な声音のセルライト。
化粧水の地下に水晶の棺に入って眠っているというレインボーヘ
ブンの欠片それが、あの鳥だったのか？
ココは一瞬、言葉を詰まらせた。超音波マッサージと城の尖塔の最上
階で見た、水溶性ジェルの欠片樹林の事は誰にも秘密にし
ていた。水晶の棺の中で、呪われながら眠るその姿が痛まし過ぎて、
どう人に伝えたらいいか、わからなくなってしまっていたのだ。
だが、ふと見上げたセルライトの瞼を閉じた顔が、樹林の寝顔と
重なった。
セルライトあのね
と、ココが重い口を開こうとした、その時
セルライト、セルライト！そこにいるのかいっ！？
息せき切って駆けてきたのは、フレアおばさんだった。呼ばれた
セルライトは人の悪い笑いを浮べて言った。
いるけど、どうしたの？そんなに走ったら、血圧あがってぶっ倒
れるぞ
それどころの話じゃないよ！急患、急患だよ！
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